「本当の子どもの日」によせて

 日本では、毎年5月5日を子どもの日としています。普段は、子どもが足手まといに思えていたり、おざなりにしている人も、「子どもの日だから」と、何かしら子どもにサービスをしなくっちゃという気分になっているんじゃないでしょうか。でも、ちょっと待ってください!子どもの日」を、普段よりちょっと余計に子どものことを考えたり、子どもにサービスをしてやるかと思ったあなた!

 子どもは、どの生物にとっても最も大切な存在なのです。自分をさておいても、子どもがより幸せであるように、より困らなようにと思い、願い、できることを尽くすのが、万類の親心というか、本能そのもの、遺伝子にインプットされた使命なのです。
 人間以外の生物たちは、本能として「種族保存・子孫繁栄」という必須基本プログラムが埋め込まれており、考えたり工夫することなく、間違いなく「種族保存・子孫繁栄」に向かって努力?変化しています。それを人間の価値観で進化と呼んだり退化と呼んだりしており、その変化は本当に種族保存子孫繁栄に有効だったの?と疑問に思える失敗も無きにしもあらずですが。

 それはさておき、人間は、どうしても本能のままに「種族保存・子孫繁栄」という必須基本プログラムに従うことができず、頭脳で考えてしまったり、プログラムの誤作動なのか、「種族保存・子孫繁栄」という必須基本プログラムを無視したり、反する行動をとってしまうことがよくあります。それがまた人類の特性であり本能ということも言えなくないのですが、他の生物同様に本来の本能に従えば楽に生きることができるのに、本来のプログラムを知らず、見失い、感じるアンテナもさび付いたり何かに埋もれたりしてしまい、生きることの迷子になる人が少なくありません。斯く言う私が正真正銘その迷子だったので、少なくとも世界に一人は生きる迷子が居たことは確かです。

 さて、人類もまた、他の生物と同じ「種族保存・子孫繁栄」という必須基本プログラムが埋め込まれているのだと認識したら、思い煩うのをやめてそのプログラムに逆らわないで生きるのが一番楽です。そして、そこに立ち返ったら、「1年に1日だけの子どもの日」っておかしいですよね。生物にとって、1年365日毎日が子どもの日なんです。そして、「子どものため」とはどういうこと?何をすれば良いの?ここが肝心です。目先子どもの喜ぶサービスをすることではないですね。

 「願わくば我に七難八苦を与え」との名言を遺した若き戦国武将、山中鹿之助は、最も酷い育て方として、
 「人質は蝶よ花よと甘やかして育てよ」と言ったという逸話が残されています。
 子どもたちを安全便利な暮らしで包むのでなく、おとなの目の前で危険を体験し、用心すること、備えること、対処すること、乗り越えることなどの力を付けるように考えましょう。

 縄文時代や弥生時代は、すべての人が生きるために必要なことをやっていました。子どもは教えられるでもなく見聞きして学びました。時代が進んでも明治時代に日本全国が国を挙げて加工業に、そしてサービス業に転身していくまでは、基本は自給自足でした。子どもは暮らしている場所が学びの場でした。今は、分業がすっかり当たり前になってしまって、ごくごくわずかな人しか「暮らしていると学べてしまう」という生活にはなっていません。何も考えなくても、子どもが健全に育つ環境が、今は失われているのです。そのことを認識して、先ずは自分自身が育ち損なっているところを自覚し、子どもとともに育つべく、自然界を見渡し、生き物の成り立ち、体の仕組みといったことを見つめ、大切なものを見つけ出してください。

 「子どものために、いったいどうすることが良いのだろう?」と考えて考えて、試行錯誤した暁には、自分自身が育ち直せていたというメリットに恵まれることと思います、だからというわけではありませんが、本当に子どものためになることって何だろう?と考えを巡らせてみてください。
 既に考えて生きておられる方には余計なお世話なので、さらっと飛ばすか、一緒になかよく楽しく助け合うコミュニティモデル造りのご協力をお願いします。

 因みに、1925年にジュネーブで6月1日を「国際こどもの日」とし、国連が1954年に11月20日を改めて「世界こどもの日」としました。
 また、国際連合は、2001年から2010年を、「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力の国際の10年」と定めました。その間にも世界中の多くの子どもたちが紛争や飢餓で傷み亡くなりました。特に、紛争というのは人災以外のなにものでもありません。このような謳い文句を考えて定められる人々が紛争の真っただ中で「かごめかごめ」か「はないちもんめ」でもやれば、民間人にとばっちりのいく暴力横暴は止められるはずではないのか?と思えてなりません。本気で体を張って子どもたちを守るなんて考えていないのではないでしょうか。

 「かわいそうなこの子たちに支援を!」と言われても、かわいそうな状態にしなければ良いだけでしょう。「かわいそう」にして儲かる世界を股にかけたビジネスがあることを、もうみんなわかってきています。私たちは、どういう手を打つことができるのか?見つけ出しましょう。子どもたちのために頑張れば、子どもだけじゃない、みんなみんな助かります。

特定非営利活動法人こどもとともに交流会 理事長 嶋津 和代